読書シリーズ「ヒトはなぜ病み、老いるのか」

WB HOUSEのBlogへようこそ!”健康に拘る”営業の河野です。資料差し上げます!
こうしてあなたと出会えたのも何かのご縁です、ぜひ「WB工法」と、「エアープロット」いう言葉を覚えて帰ってください、いつか必ずあなたのお役に立ちます!長野の棟梁が考えた「換気扇を使わないで室内の湿気・VOC・臭気を排出」する工法と、白金担持触媒で「アレルギー源を無害化する」方法です。

 

『ヒトはなぜ病み、老いるのか』若原正巳著 新日本出版社

若原正巳(わかはら まさみ)
1943年、北海道生まれ。北海道大学理学部卒、同大学院理学研究科博士課程修了、理学博士。1970年から北海道大学理学部で研究・教育に従事。両生類の実験発生学が専門で、主な研究テーマは「遺伝子発現に及ぼす環境因子の影響」。2007年に北海道大学を定年退職

備忘録
【◆なぜインフルエンザは毎年流行するのか
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 しかし、多くの病原体は免疫システムをかいくぐる方法を進化させて対抗する。B細胞は姿を変えた病原体を認識することができない。病原体が開発した一番うまい方法の一つは自分の表面タンパク質を変化させる抗原シフトという方法だ。
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 たとえばインフルエンザは、毎年その表面タンパク質を変化させるので、去年かかったインフルエンザに対する抗体が利用できない。だから毎年その年に流行が予想されるインフルエンザの表面タンパク質を想定してワクチンを準備しなければならない。
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◆風邪の原因と対策
 とりあえず風邪の原因となる代表的なウイルスを上げておくと、鼻やのどに感染するコロナウイルス、ライノウイルス、アデノウイルスがいる。さらに腸に感染するエンテロウイルス、集団食中毒で問題になるノロウイルス、ロタウイルスなどがいて、さまざまな症状をもたらす。
 風邪の症状は、咳、鼻水、くしゃみ、発熱だ。なぜ、咳や鼻水が出るのか。それらのすべての症状は、ウイルスを身体から外へ出そうとする防御反応だ。くしゃみや咳は、その時勢いよく出される息、つまり呼吸中にある大量のウイルスを外に排出するのが一番の役割だ。その中には有害なウイルスが含まれているので、マスクをして感染を避けるというのが常識になっている。

 よく集団食中毒で報道されるノロウイルス感染の際に見られる下痢や嘔吐もウイルスを消化管の中から排出しようとする反応だ。嘔吐したり、下痢をするのは苦しいが、体が必死になって排除しようとしているわけで、体はそのようにしくまれている。
 風邪の症状で一番の問題は、発熱、悪寒、だるさ、倦怠感だ。これがどうして起こるのか、なぜ発熱して気分が悪くなるのかを考えてみる。最初に起きる反応は、マクロファージという白血球の一種によってウイルスが捕食されることから始まる。風邪をひくと熱が出るのは、このマクロファージによる反応が引き金だ。その仕組みを詳しくみておこう。
 ヒトはほぼ36℃という体温を保っている。体温がこのように一定に保たれているものも恒常性(オメオスタシス)の一つだが、実に微妙なしくみが働いている。ポイントだけを述べると、
@発熱量を増加させるしくみ:物を燃やして発熱する、血液量をふやして熱を体中に運ぶというやり方と、
A報熱量を上げるしくみ:熱を逃がして体温を下げるしくみがある。汗をかいて冷やすとか毛細血管を拡張させ熱の放散をうんがすというものだ。
この二つを組み合わせて体温を一定に保っているが、その中心に座っているのが脳の視床下部という部位だ。
体温も視床下部がモニターしている。ここが寒く感じれば発熱を増やし、熱く感じれば放熱する。それが釣り合って大体36℃という温度に保たれている。
 では風邪をひくとどうなるか。いろいろなウイルスに感染すると自然免疫系がはたらく。すべての動物が進化の過程で獲得した防御機構の第一段階だ。最初に、全身のいたるところに分布して生体防御の初動活動をおこなっている食作用をもった大型の白血球(マクロファージ)がはたらく。
マクロファージがウイルスを食べる→インターロキシン(タンパク質をつくる)→プロスタグランジをつくる→脳に達する→視床下部に働きかけて設定温度を上げる→38℃〜39℃に設定される。
風邪をひいて熱が出るというのはまさに体の正常な反応だ。熱が高くなるとウイルスは増殖しにくくなり、同時に免疫細胞が活性化され働きやすくなってウイルスを攻撃する。このようにして風邪は自然に治るのが普通だ。
◆解熱剤の使用
 アスピリンはドイツのバイエルン社の商品で科学的にはアセチルサリチル酸が本名だが、もとも植物の柳からとられた物質だ。
 アスピリンはプロスタグランジの合成を阻害する。ある酵素をはたらかなくして、アラキドン酸という前駆物質からプロスタグランジになる反応を止めてしまう。プロスタグランジがなければ視床下部は元のままの温度設定だから熱がでない。発熱がおさえられる。その結果免疫系は制御され、ウイルスの増殖を抑えることはできにくくなる。風邪がぶり返すことがよくあるのはそのためだ。
 アスピリンに代表される鎮痛。解熱剤は、ウイルス自体をやっつけることはできない。エフェドリンを含む咳止めの薬もウイルスを殺すことはできない。ペニシリンやストレプトマイシンのような抗生物質は病原菌の増殖を抑制するので、炎症などは治るが、抗生物質はウイルスには効かないので、風にはまったく無効だ。
だから風邪には対処療法しかない。やはり体を暖かくして栄養を取り休息する以外に手はない。
 最近ウイルスの活動を制御する薬品が開発された。インフルエンザに効くタミフルなどだ。タミフルは中華料理の材料である八角からとられた物質で、ウイルスの増殖を抑制する作用がある。タミフルはウイルスを直接殺すわけではなく、ウイルスが宿主細胞から別の細胞へと感染を広げるのを阻害する。詳しく言えば、細胞の膜を溶かすノイラミニダーゼという酵素の働きを阻害することでインフルエンザ・ウイルスの増殖を抑制する。タミフルには、意識障害や精神神経系の異常症状が現れるなどの副作用の問題が残っているが、いずれウイルスの増殖を薬物で抑えることができるようになるだろう。残された問題は、タミフルを頻用することで生じる耐性ウイルスの登場だ。
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◆血は何故固まる
 血液凝固の主体は血小板という血液に含まれる非常に小さな細胞断片だ。これが空気に触れると、次から次へと反応が進んで、最終的にフィブリンという繊維状のタンパク質ができて、そのタンパク質が周りの血液細胞などをからめとって凝固する。血管内でこの反応が起こってしまうと大変なので、いくつかのチェックポイントをつくって制御している。

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◆化学物質によって引き起こされるガン
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 当時、ガンの発生原因は不明で、主な説に「刺激説」「素因説」などがあった。東京大学医学部の病理学者山極勝三郎教授は、煙突掃除夫に皮膚がんの羅患が多いことに着目してタールがガンの誘因であるという刺激説を採り、実験を開始した。その実験はひたすらウサギの耳にコールタールを塗布し続けるという地道なものだ。山極教授は、助手の市川厚一と共に、実に3年以上にわたって反復実験をおこない、1915年にはついに人工ガンの発生に成功した。
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◆細胞分裂と細胞周期
図6はDNA複製の様子と細胞分裂の進行具合を模式的に示したもので細胞周期と言う。DNA複製を中心に、細胞分裂がどのように進行するのかを理解するにはとても大事なものだ。この細胞周期が1回まわると最終的に1個の細胞が2個に分裂することになる。細胞周期は、大きく4つにわけることができる。
 細胞分裂が終わった直後の細胞からはじめると、最初がG1期、つぎにDNAを複製するS期、その次がG2期、分裂する段階をM期と呼ぶ。そのS期にDNA複製が生じる。30億塩基対ものながいDNAが複製される時期だ。細胞の種類にもよるが、この細胞周期が1周りするには大体24時間くらいかかる。このS期と呼ばれるDNA合成時間は、大体10時間くらいかかる。生体ではこうした細胞分裂が毎日のようにくるくる回っている。

 DNAの複製は複雑な仕事でどうしても間違いが生じるので、それをチェックするシステムが生じた。細胞周期1周りに3カ所のチェックポイントがある。図6がそれを示している。ひとつはG1期の後半にあるG1/Sチェックポイントだ。これからDNA合成を始めるわけだが、そのもとになるDNAに以上がないかをチェックするポイントだ。2番目はG2期の最後、これからM期に入るという時点で、G2/Mチェックポイントと呼ばれるものだ。複製されたDNAが本当に正しいか、分裂期に入ってもよいかどうかをチェックするポイントだ。最後のチェックポイントは、M期の終わりにあって、染色体とそれを引っ張る紡錘糸が正しく結びついているかどうかをチェックする点だ。
 このチェクポイントの中でも特に重要なのが、G1期の後半にあるものだ。万が一DNAに損傷があればそれをチェックするタンパク質がやってきて、DNAの傷を修復する。紫外線や化学物質などいろいろなものがDNAを傷つけるし、なんといっても全長30億塩基対ものDNAを端からどのどん複製していくのでどうしても間違いが生じる。その間違いをもとのDNAと同じ配列に修復するシステムがある。
◆細胞分裂を監視するシステム
 細胞周期のG1/Sチェックポイントの中心メンバーがP53というたんぱく質だ。
 細胞のDNAは放射線や紫外線、いろいろな化学物質や場合によっては体の中で生じる活性酸素などによって傷が生じる。DNAにこうした傷があるとP53タンパク質がやってきてDNAの傷を見つけ、DNAを修復する酵素を作る。DNA修復酵素だ。
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 修復がうまくゆかないときには、その細胞を見つけて破壊してしまう。アポトーシスと呼ばれているが、DNAが修復されなかった細胞は自分で死んでゆく。いわば自殺に追い込まれる。このように異常なDNAをもった細胞は排除される。これが正常な体で起こっていることだ。しかし、場合によってはP53タンパク質の遺伝子が突然変異で異常になってしまうケースも想定される。
 P53タンパク質が異常になったときには、DNAの修復酵素もできないからDNAの修復ができないし、その変化した細胞も自殺することができない。こうした細胞はDNAに傷を残したまま、異常を残したまま分裂を続けることになる。
 非常に単純化したがこれがガン細胞なのだ。
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◆老化と遺伝子
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 老化の原因はDNAの突然変異の積み重ねによるという考えがある。
 ヒトの細胞には30億塩基対という膨大なDNAがあるが、細胞分裂のたびにこの30億塩基対すべてを複製する。10時間くらいで30億を複製するので、単純計算によれば1時間あたり3億個、つまり1分間に500万個、1秒間に10万個の塩基を複製するから、どうしても間違いは起こる。平均すると10の7乗塩基対(1000万塩基対)を複製するとどうしても1個はミスをするという。
 しかし、細胞にはそれを修復する機能もあり、間違いがあればそれを直してできるだけ正しいDNAを引き継ぐしくみがある。その修復をしても10億個に1個は間違ってしまう。どうしても突然変異は避けられない。
 DNAはいろいろな原因で変異・変化するが、それらの変異が積み重なって動物は老化をし、寿命を迎えるという仮説が突然変異蓄積説だ。2万3000個という様々な遺伝子が突然変異を起こすことで老化が進行し寿命が尽きるという考えだ。
 それに対して寿命に関連した遺伝子があるという考えもある。その遺伝子が変化すると老化し寿命を迎えるという早期老化遺伝子説だ。つまり、寿命そのものが特定の遺伝子にかきこまれているという考えだ。きちんとしたはたらきを持っている遺伝子が突然変異を起こすと老化が加速し、寿命が早まるという遺伝子が見つかっている。いわば遺伝子には時計の働きがあって、時を刻んでいるというものだ。
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◆テロメア仮設
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 このテロメア説のもとになっているのはDNAは複製するたびに短くなっているという事実だ。なぜ複製の度に短くなるのかは大変難しいもので詳しい説明は省くが、原理的にはDNAは複製するたびに短くなる運命にあることは、DNAの二重らせんのモデルの提唱者であるジェームズ・ワトソンが最初から指摘しているDNA複製の宿命だ。
 これを防ぐ方法がテロメアという構造で、DNAの複製によって短くなっても大丈夫なように余分な配列をはじめからもっている。このテロメア部分には遺伝情報は全く含まれていない。無意味な繰り返しの配列が何千塩基と連なっている。
 「テロ」というのはギリシャ語で端という意味だから、まさに染色体の末端にあて染色体を保護しているものだということが実感できる。つまり染色体の末端にテロメアという特殊な構造があって、それが染色体が短くなっていくのを守っていると考えられている。

 

◆細胞の運命
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@全能性細胞―――その代表は受精卵だ。受精卵からすべての細胞ができてくるから受精卵は全部の能力をもっている、つまり全能性をもっていることになる。
A多能性細胞―――その代表がES細胞(胚性幹細胞)だ。もともと受精卵が分裂を始めた細胞の集まりを培養したものが始まりだ。受精卵が少し発生した胚(エンブリオ)から作られて、ほとんどどんな細胞にもなれる細胞だ。ただし、これを作るには出発材料が受精卵だから、ヒトでは入手が難しく倫理的な問題がある。そこで京大の山中伸弥教授が中心となって、人工的な多能性幹細胞が作られた。ある種の遺伝子を導入することで、普通の細胞を多能性幹細胞にする技術ができた。これがiPS細胞だ。ヒフの細胞から作られて、ほぼ何にでもなれる人工的な細胞だ。
B組織幹細胞(体性幹細胞) ―――もともとヒトを含めた動物の体の中にある細胞だ。すべての細胞にはなれないが、ある特定の細胞群を次から次へと作り出す細胞群だ。有名なものは、神経を作り出す神経性幹細胞、いろいろな血球を作り出す血液幹細胞、そしてヒフや小腸上皮などを作り出す上皮性幹細胞などだ。こうした細胞があるので、ヒトを含めた動物は毎日血液細胞を作り、ヒフを補修し、けがをしたりしても再生して生きてゆくわけだ。
C単能細胞―――単能、つまり一つのことしかできない細胞で、最終的に分化した多くの細胞だ。たとえば造血幹細胞から作られる赤血球は完成するとそれで終わりで、他の細胞になることなくそのまま死んでいく。
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◆iPS細胞の衝撃
・・・・・・・・・・・・・・その方法を簡単に説明しておく。
まずヒフの細胞を取り出して培養して、その細胞にOct3/4、Sox2、Klf4、cMycという4種類の遺伝子を導入してiPS細胞を作り出すことに成功した。
 ヒトの遺伝子の数は約2万3000個だ。ヒフの細胞はその遺伝子のうち、ある一部の特定の遺伝子だけがはたらいて(発現しているという)、残りの大部分の遺伝子ははたらいていない(抑制されている)。そうした特定の遺伝子だけが発現しているヒフの細胞を、どんな細胞にもなりうる細胞(それがiPS細胞)に変化させるには、ヒフの細胞では抑制されている多くの遺伝子の抑制を外さなければならない。そうしたはたらきをする遺伝子を見つけることがiPS細胞確率に向けての最初の仕事だ。
 ・・・・・・・・・何百、何千とある候補遺伝子から、この4種の遺伝子を見つけたことが山中教授グループの成功のカギだったと言われている。
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◆「夢の若返り」はない―――スタップ細胞の功罪
2014年、理化学研究所の小保方晴子さんが作ったと言われる「どんな細胞にもなることができる」万能細胞(それがスタップ細胞)は、一世を風靡しマスコミに大々的に取り上げられた。しかし、いくら小保方さんが「スタップ細胞はあります!」と力説しても、発表論文の図の使いまわしや改ざん、捏造が明るみに出て疑惑が生じた。最終的には理科学研究所が総力を上げても実験は再現できず、スタップ細胞を作り出すことはできなかったので、現在ではほぼ捏造だったと思われる。
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◆ヒトのサーチュイン遺伝子
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 その研究は2つの方向からなされた。1つは遺伝子操作の実験研究だ。酵母に遺伝子操作をして、サーチュイン遺伝子を活性化しそのサーチュイン・タンパク質をたくさん作らせると、寿命が延びたというものだ。普通の酵母は22回の分裂で寿命を迎えるが、サーチュイン遺伝子を活性化すると、平均して28.8回まで分裂するというデーターがある。
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こうした研究が積み重なって、今から5年ほど前にはサーチュイン遺伝子がヒトの長寿遺伝子だ、という説が一世を風靡した。
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◆ヒトのサーチュイン遺伝子
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 一番の問題は、どうやってこのサーチュイン遺伝子を活性化するかだ。そのサーチュイン遺伝子はカロリー制限で発現することが報告され、一躍脚光を浴びた。
ヒトの場合は、サーチュイン遺伝子はグループをなして存在し、サーチュイン1からサーチュイン7まで7種類ある。
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サーチュイン遺伝子を活性化させるとなぜ長寿になるか。サーチュイン遺伝子にはもともといろいろな遺伝子の発現を抑制するはたらきがあるので、このサーチュイン遺伝子が活性化するとさまざまな遺伝子の働きが抑えられる。その結果、無駄なエネルギーが使用されずに長生きできると考えられる。
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もう一方ではポリフェノールが、サーチュイン遺伝子を活性化させるという研究もある。
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マウスやラットでは寿命が3年程度だから、きちんと実験を繰り返し、20%とか30%のカロリー制限をすると、寿命が一定程度伸びるのは間違いない。
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 現在はサーチュイン遺伝子説にも少し陰りが出てきたようだ。個人的な意見だが、サーチュイン遺伝子はヒトにもあるし、それが活性化すると寿命が延びるかもしれないが、寿命を決めているのはそれほど単純なものではない、と思っている。
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フレイル(虚弱)の最たる要因がサルコペニアという筋肉の衰えだ。筋肉の衰えをできるだけ遅くすることが健康寿命の秘訣だ。
良質のタンパク質をとり、適度な運動をすることが大事だろう。
Wiki
《サルコペニアは、1989年にRosenbergによって「加齢による筋肉量減少」を意味する用語として提唱された。サルコペニアは造語で、ギリシア語でサルコ(sarco)は「肉・筋肉」、ペニア(penia)は「減少・消失」の意。》
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◆寿命を決める複合要因
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ヒトの寿命は複合要因で決まる。テロメア、ミトコンドリア(酸化ストレス)、免疫機能、サーチュイン遺伝子、分子修復能、再生能力、そのほかに心理的な要因もまた常用だろう。こうした要因の一つひとつが総合的に寿命に関連していて、そのすべてが満足されれば120歳という寿命を迎えることができるが、そのうちのいずれかが欠けていくと寿命が尽きるという考えだ。
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最終的にそのヒトの寿命がどのように決まるのかを考えるときには木の桶をイメージしてもらえばよいだろう。木の桶は側板という一定の長さの木の板を丸く並べて箍をはめて作る。その側板の高さがそろっていない木の桶では、側板の一番低いところから水が漏れてしまう。そのおうに、側板の最低の高さが寿命を決めているという考えがある。
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◆貝原益軒の養生訓
貝原益軒は福岡藩士で、江戸前期の人。84歳まで生きた。
@ヒトの寿命は最大100歳と述べている。
A腹八分目。
B酒は程々に。
C塩分を控える。
D野菜の摂取。
E歯の養生。
F薬は毒。
Gたばこの害。
H運動の勧め。
I身体の養生と心の養生。
益軒のいう人生の楽しみは、@道を行い、善を楽しむこと、A病なく、快く楽しむこと、B長寿の楽しみで、現在にも通じるものがある。
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◆自律神経を鍛える
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危険に遭遇したときには自律神経の交感神経がはたらいて臨戦態勢をとる。交感神経の神経伝達物質は主としてノルアドレナリンだ。交感神経が亢進すると副腎髄質からアドレナリンが放出され、瞳孔拡大、心拍数の増大、血圧上昇がもたらされる。同時に副腎皮質から糖質コルチコイド(コルチゾン、コルチステロン)と鉱質コルチコイド(アルドステロン)などが放出され、ストレスに対抗する。この交感神経のはたらきを自分の意志でコントロールすることはできない。
 交感神経のはたらきを鎮めるのが副交感神経だ。副交感神経からは主としてアセチルコリンが神経伝達物質として放出され、内臓や分泌腺に抑制的(場合によっては促進的)にはたらく。副交感神経がはたらけば、たとえば瞳孔は縮小し、心臓の拍動を抑制する。同時に血管が広まり血圧が下がり、胃の蠕動運動は促進される。結果として闘争モードから安静モードへと切り替わる。
・・・・・・・・・自律神経は脳神経系の支配下にあるが、交感神経は直接脳の支配を受けていないので、「自立」の傾向が強く、意識的にコントロールするのは難しいのだ。それに対して副交感神経はより大脳に近い中脳や延髄から出る神経もあるので、自立神経とはいえ意識的にコントロールできる領域が大きいと考えている。だからヨガや瞑想のように自分の力で意識的に精神をコントロールできる余地があるのだ。
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◆老いを生きる
ヒトは必ず死ぬので、年をとれば残りの人生は間違いなく少なくなる。これまで述べてきたように不老不死もなければ「夢の若返り」などもない。だから、残された時間を有効に過ごす以外にない。その中でやりたいことをやることが極めて大事だ。
 長寿の秘訣は、ふつう@1つか2つの趣味をもつこと、A知的好奇心を持ち続けること、B適度に体を動かすこととまとめられる。さらに言えば、Cよく笑うこと、D集団の中で孤立せず生きること、などが指摘されている。私はそれらに加えて、Eだれかの役にたつこと、を加えたいと思う。
・・・・・・・・以下略・・・・・・・・・】