WB工法大臣認定までの3年4か月

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(株)ウッドビルド会長 寺島今朝成

WB工法大臣認定までの3年4か月
 2003年4月22日、換気装置がなくても室内に化学物質がこもらない透湿・透過の機能を証明する200棟以上の実測データーや、大学との共同研究を裏付けとして「20条の7」による特別評価に道を拓こうと、私が最初に訪ねた国土交通省の窓口は「住宅局建築指導課」でした。
 国土交通省としては24時間の機械換気しか念頭になく、その他の工法・システムはまったくの想定外だったようです。しかし、一人の課長補佐が私たちの説明を聞いて、透湿透過による改善はあり得ると理解し、特別評価の基準づくりに着手することを約束してくれました。
 特別評価は、まず国が評価の基準を作ることから始まり、その評価を大臣が民間に委託します。国の基準に対してどのような審査をし、どのように評価をすればいいか、「評価業務方法書」を作成し、国の審査を受けた後、国土交通大臣から特別評価機関としての認定が行われ、初めて20条の7の申請窓口ができる仕組みでした。
 初訪問以来、建築指導課による評価の骨格づくりはなかなか進みません。国を動かすためには、自分たちの熱い思いをぶつける必要があると思い、WB工法友の会などの仲間から2か月で5万4642人の陳情書を集め、6月には国土交通省に提出しました。
 既に換気が義務化された(7月1日)1か月後の8月に建築指導課はようやく評価の骨格を作成しました。そして12月に2つの評価機関が内定したため、2004年1月に(財)日本建築センターに性能評価を依頼することになりました。

 

 しかし、ここで事態は再び滞ります。評価機関が評価業務を進めてくれないのです。国交省の課長補佐に現状を訴えると「評価機関がWB工法を理解できないでいる」「再三にわたり督促しているが、評価の主体はあくまで評価機関なので評価機関主導で進めたい」と遅延の理由が説明されました。後に評価機関とはハウスメーカーがつくった団体だと知りましたが・・・。
 お役所仕事の典型である「たらい回し」です。国交省は評価基準を策定するだけで、評価業務は指定機関で行われる仕組みになっているため、一貫性がなく責任の所在もあいまいです。その評価機関は規格住宅(工場生産)でないと評価が困難であるというのが実態でした。
 私はこのままでは、ただ引き伸ばされるだけだと思い、直接、WB工法の内容を評価機関に説明することを求めました。後日、その説明の場で、評価機関である日本建築センターの担当者が思わぬ本音を漏らしました。「国交省の指示なのでやらざるを得ないのですが、正直困っており、できることなら逃げたい心境です。評価が不適切だと裁判沙汰もあるので、住宅産業界に混乱をまねくことにもなります。プレッシャーも大きい」
 住宅産業界の混乱やプレッシャーとは、多分に大手住宅メーカーを意識した発言でしょう。
 5月に入ってようやく、規格住宅以外の業務を説明する「業務方法書」が日本建築センターから国交省へ提出されました。数回にわたる修正指導の後、ようやく申請窓口ができたのです。8月になって申請資料の作成が開始されました。1年半を費やして、ようやく申請の段階までこぎ着けたのです。これまで国交省へ11回、評価機関へ7回の訪問を重ねています。

 

特別評価を妨げる学者
 2004年12月に特別評価の申請書を提出し、翌年1月から特別評価委員会による技術評価が始まりました。評価終了後の大臣認定まで実に20か月を要しました。その第一回委員会の会場には6名の評価審査委員(学者)がいましたが、私たちの申請内容は冒頭で根本から否定されたのです。委員の一人が発した言葉には愕然とさせられました。
「我々は5年間かけて、ありとあらゆる角度から検討した結果、機械換気より他に方法がないという所にたどりついた」との説明で次回は2ヶ月後の3月と一方的に打ち切られました。
 自分たちの面子にかけて、機械換気以外は認めたくないというニュアンスが伝わってきます。国の立場(学者の立場)とすれば、換気設備の義務化をして半年も経っていない時点で、それを覆すような特例は認められないということでしょう。挙句の果てに「大臣認定は難しいので、評価機関の認定でどうか」と言い出す始末です。新たな大臣認定が出ると大手住宅メーカーに与える影響が小さくないので、メーカーが設立した日本建築センターの認定でどうかというのです。しかし、大臣認定でなければ、何の効力もありません。このままでは展望が拓けないと痛感させられました。
 翌月、私は大臣への陳情と行政訴訟の決意を固め、評価機関へその旨を伝えました。そして、3月には国交省大臣官房審議官(住宅局担当)を訪ね、現状を訴えました。それが功を奏したのかどうか、同月には評価機関の理事と評定部長が私を訪ねてきて、1カ月以内に評価を開始すると約束したのです。結果的に行政訴訟は行いませんでした。
 こうした経過を経て3月の第2回委員会からまともに取り組んでもらえるようになったのです。それでも当方と委員の話はなかなか噛み合いません。こちらは機械換気不要の特別評価を申請しているのに、委員からは機械換気の基本的な考え方が繰り返されるばかり。彼らの主張は次の3点に集約されます。
@石膏ボードはホルムアルデヒドの遮断材である
A化学物質はホルムアルデヒドだけではない
Bよって室内空気の改善には機械換気は万能である
 いやしくも学者の端くれが「石膏ボードはホルムアルデヒドの遮断剤だ」などと、よくも言えたものだと思います。石膏ボードを使った九州大学との共同研究のデータも提出してあるのですが、この研究を行った教授が建築学会ではなく木材学会に属するためか、実験の設定条件等に異論がはさまれました。そして、評価機関の担当者は次のように言いました。
 「自然界において室内空気環境の改善はあり得ないのです。なぜなら物が動くには駆動力が必要です。ということは今回の法律は動力なしではだめだということです”透湿・透過””水蒸気分圧”と言われても当方に知見がないので評価できません
 そもそも「20条の7」は特別評価であって、換気設備を使わずに安全を保障するものです。その審査を受けているにもかかわらず、評価審査委員は「自分たちがお墨付きを与えた換気設備の意義!」を力説するばかりです。何のための審査なのでしょう。
 品確法の国会付帯決議にあるように「特別評価方法認定にかんする技術的情報等を可能な限り公開することにより、手続きの透明性の確保と新しい技術の普及を図ること」が法の精神であるはずですが、評価委員は新技術の普及を妨害しているのです。私は「換気設備不要」を実証し「20条の7」に先鞭をつけて、その資料を公開しようとしているのに、評価機関がその足を引っ張っているわけです。
 ウッドビルドの担当者が「それでは20条の7の特別評価は意味がないではないか。法律の根拠が揺らいでしまう!」と反論すると、「我々が法律です」と開き直る始末です。彼らは「法律」を作る主体ではありません。しかし、国によって指定された性能評価機関は発言力を強め、一部で法律の改正を働きかけているのが実態です。こうした傲慢さが「我々が法律です」というような発言を生むのでしょう。
 ”透湿・透過””水蒸気分圧”を「知見がない」という理由だけで退けてしまう建築学者の姿勢には疑問を感じます。後日、この学者は石膏ボードがホルムアルデヒドを透過させることを認め「盲点だった・・」と弁明していますが、特定の立場に身を寄せるために「見ようとしなかった!」というべきでしょう。学者の態度としては、原発事故における「想定外」と通じるものがあります。
 また「特別評価」という評価のあいまいさには大きな疑問を感じました。
 私は過去4年にわたる四季のデーター(透湿高気密で新築した200棟のホルムアルデヒド濃度測定が平均0.04〜0.07ppm)を資料として提示したところ、評価委員は「1000棟、2000棟を実測しても評価に値しない。なぜなら今回の法律は入口評価であり、実測は出口評価なので法律に即していない」と言い切りました。
 そもそも「20条の7」は「四季を通じておおむね0.1mg/m3(0.08ppm)」を規定していますが、化学物質の濃度はどこで測定するのでしょうか。机上の計算でいいのでしょうか。信頼できる数値は、実測しかないのです。新築住宅での実測を否定して、入口だ出口だと屁理屈を重ねる評価委員の行為は、不純物がたっぷり入った駄菓子のようです。

 

 初めて国交省を訪ねてから2年半、評価機関への訪問は20回を超えていました。評価審査委員が納得のできるデーターを提出するために再実験なども求められました。とにかく時間がかかります。官僚や評価委員(学者)はいくら時間がかかっても、運営費や給料が保障されていますが、我々民間人はその間も事業によって稼ぎを上げなくてはなりません。時間的・費用的な限界も感じつつあったので、何とか妥協点を探るように方針を切り替えました。
 審査が終盤にさしかかった頃、評価委員から「申請を透過の濃度勾配だけにしてはどうか。水蒸気がからむと複雑な家の実証がむずかしい」という申し出がありました。
 「透湿・透過」の「透過」だけを認め、化学物質が壁を透過することによって室内の機械換気が不要となることを認めるというものです。これまで学界で知見の蓄積がないので、湿度については評価できないというわけです。
 けっして100%満足のいく提案ではありませんが、この辺が落としどころかという判断をせざるを得ませんでした。その結果、評価機関は石膏ボードのホルムアルデヒド透過を認め、当方は室内ではなく壁体内での動力の使用を条件として認めるという妥協案です。本来は壁体内も動力は必要ないのですが、評価機関の面子を立てた格好です。

 

 2006年5月、評価機関は通気断熱WB工法について「室内換気を具備せず機械換気0.5回/時以上に相当する透過を備えている構造方法と評価する」とする性能評価書を作成。8月11日に特別評価の第一号として大臣認定に至りました。(認定番号RLFC−0001)
 国交省で認定書を受け取った後、評価機関へ挨拶に出向きました。
「それにしても良く認定になりましたね。今もいろいろ申請されていますが、窓口でほとんど却下されています。自由設計では空気環境の保証は出来ないのが学会の見解なんです。こんな難しい物件が多いと、センターはつぶれてしまいます。あはは」
 国交省の課長補佐は実直で親切な人でした。評価機関も比較的真面目に対応してくれました。関係者の中に悪い人はいないのですが、ガチガチに融通の効かない仕組みが出来上がっています。これは「国(官僚)−第三者機関(学者)−大手ハウスメーカー」というトライアングルの構造に、問題の本質があると言わざるを得ません。
 法律や制度は万人に向けて公平に開けれていなければなりません。いくらこの特別評価が第一号であったとはいえ、申請に膨大な時間と労力を投入させ、押したり引いたりの駆け引きや、不本意な妥協をしなければ認定に至らないのであれば、真っ当な制度とは言えないのでしょう。産学官の癒着に起因しているのです。

 

なお、第一号の認定からわずか49日で特例20条の7が20条の9に法改正されている。
(管理人河野は、この事実に奇異さを感じます!同じ文言で何故条例の番号が”49日”で替えられたのか?WBの第一号認定を無きものにする為ではないのか・・!)
矢継ぎ早に施行されている法律が本当にお客様のためなのか、量産型と注文型に携わる者の優劣につながらないのか、法律の趣旨を追求していきたい。

日本建築文化を再興する会
「正しい家づくり虎の巻」より