『太平洋戦争最後の証言 大和沈没編』門田隆将 小学館
著者のいつもながらの、丁寧で細部に亘る取材と冷めた筆致が、より現実感をもって迫ってくる。
本書を読みながら、以前に見た「男たちの大和」(原作:辺見じゅん)のビデオの戦闘シーンを思い出した・・。
改めて、ビデオを見ながら先人の生き様に感激し泣いてしまった・・。
「死に方 用意!」
『最終艤装中の大和』
備忘録
【昭和十九年十月二十四日レイテ沖海戦にて・・
敵の波状攻撃が終わった時、大和の乗組員は、戦争の悲惨さをその目で確かめることになる。敵機の猛攻は、予想以上の戦死者を生んでいた。
五番高角砲の信管手、坪井平二は、砲室から出てきた時に息をのんだ。どす黒い血が甲板や壁に飛び散り、腕や足をはじめ、肉片があちこちにちぎれ飛んでいた。無残な仲間の遺体が目の前にごろごろ転がっていたのである。
「甲板には肉片とか、ちぎれた腕や頭が散乱していました。機銃の兵隊は、みな、露出しとるからね。海軍には、オスタップといって、盥みたいなバケツがあるの。深さは四十センチぐらいかね。少し深いんですよ。それに、肉を拾うて、放り込んでいきました。もちろん血は付いたけど、手を洗う場所も無い。仕方がないから、服で拭きましたよ。そのあと、次の敵の攻撃に備えて握り飯を食いました。異常心理やね。あれは、殺人者が人を殺す時みたいな異常心理やと思う。あまりにも悲惨な光景ですから、逆に、もう汚いとか、怖いとか、心配とか、そういう感覚が全然なくなるんだね。服で血をこすって、その手で握り飯を食ってね」
坪井はその異常な心理状態の自分を今も記憶している。
【戦艦大和の最後】
【大和の戦闘シーン】
「飯を食いながら、“次は俺の番か”という思いはあったね。この握り飯が最後の飯になるかもしれん、と。あの時は、一種の狂人になっていたのだと思う。そこで、煙草を吸ったんだけどね。これがうまかったんですよ。ほっとしたわけやね。これも異常心理やね。戦後、凶悪な殺人事件の記事とかを読んだ際に、ああ、これはあの時のような状態になっとるんやなあ、と思いました。人間は、異常心理になると、正常では絶対にできないことをやるもんだと思ったですねえ・・・」
昭和二十年三月二十一日、大本営は硫黄島守備隊の玉砕を発表した。
「戦局遂ニ最後ノ關頭(カントウ)ニ直面シ、十七日夜半ヲ期シ最高指揮官ヲ陣頭ニ皇国ノ必勝ト安泰トヲ記念シツツ全員壮烈ナル総攻撃ヲ敢行ス」トノ打電アリ。爾後通信絶ユ。コノ硫黄島守備隊ノ玉砕ヲ、一億国民ハ模範トスヘシ・・・」
大和は昭和二十年四月七日 沈没した・・。】
追悼 谷村新司! 「群青」