【読書シリーズ】・・『辞世の歌』

【読書シリーズ】・・『辞世の歌』

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【読書シリーズ】
『辞世の歌』松村雄二 笠間書院
松村雄二:(まつむら ゆうじ、1943年〜 2021年4月23日)は、日本の国文学者、国文学研究資料館名誉教授。
東京生まれ。開成高校卒、東京大学文学部国文科卒、同大学院国語国文学博士課程満期退学後、東京都立大泉高等学校、共立女子短期大学勤務をへて、国文学研究資料館教授。
2009年定年退任、名誉教授となる。
中世日本文学専攻。
2021年4月23日死去。
叙正五位、瑞宝小綬章追贈。
著書
『百人一首 定家とカルタの文学史』(セミナー「原典を読む」 平凡社, 1995.9
『『とはずがたり』のなかの中世 ある尼僧の自叙伝』(原典講読セミナー 臨川書店, 1999.6
『辞世の歌』(コレクション日本歌人選 笠間書院, 2011.4
『西行歌私註』青簡舎, 2013
『酒の歌 旅人から塚本邦雄まで、酒杯がそれぞれの歌をうたう』コレクション日本歌人選 笠間書院, 2019

 

備忘録
人は、死を前にして、何を想うか・・!

太田道灌
かかる時さこそ命のおしからめかねて無き身と思ひ知らずは
山崎宗鑑
 宗鑑はどちらへと人の問ふならばちと用ありてあの世へと云へ
清水宗治
 浮世をば今こそ渡れもののふの名を高松の苔に残して
千利休
 ヒツ提グルワガ得具足ノ一ツ太刀今コノ時ゾ天ニ抛ゲウツ
石川五右衛門
 石川や浜の真砂は尽くるとも世に盗人の種は尽きまじ
豊臣秀吉
 露と落ち露と消えにしわが身かな浪速の事も夢のまた夢
大谷吉継
 契あらば六つの衢(ちまた)に待てしばしおくれ先立つ違ひありとも
小堀遠州
 昨日といひ今日と暮らしてなすこともなき身の夢の醒むる曙
浅野内匠頭長矩
 風さそふ花よりもなほ我はまた春の名残をいかにとかせん
大石内蔵助良雄
 あらたのし思ひは晴るる身は棄つる浮世の月にかかる雲なし
堀部安兵衛武恒庸(たけつね)
 梓弓ためしにも引け武士の道は迷はぬ跡と思はば
早水藤左衛門満堯(みちたね)
 地水火風空の中より出でし身のたどらで帰る本のすみかに
貝原益軒
 こし方は一夜ばかりの心地して八十路あまりの夢を見しかな
近松門左衛門
 それぞ辞世さるほどにさてもその後(のち)に残る桜が花し匂はば
永田貞(てい)柳(りゅう)
 百ゐても同じ浮世に同じ花月はまんまる雪は白妙(しろたえ)
尾形乾山(けんざん)
 憂きことも嬉しき折も過ぎぬればただ明暮れの夢ばかりなる
林子平
 家もなく妻なく子なく版木なく金もなければ死にたくもなし
本居宣長
 今よりははかなき身とは嘆かじよ千代の住み家を求め得つれば
山東京伝
 耳をそこね足もくぢけて諸共に世に古机汝(なれ)も老いたり
式亭三馬
 善もせず悪もつくらず死ぬる身は地蔵もほめず閻魔叱らず
滝沢馬琴
 世の中の厄を逃れて元のまま返すは天と土の人型
蜀山人太田南畝
 ほととぎす鳴ききつるかた身はつ鰹春と夏との入相の鐘
十返舎一九
 この世をばどりゃお暇(いとま)と線香の煙とともにはい左様なら
谷文晁
 ながき世を化けおほせたる古狸尾先(おさき)な見せそ山の端の月
歌川広重
 我死なば焼くな埋めるな野にすてて飢えたる犬の腹をこやせよ
吉田松陰
 身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留めおかまし大和魂
 呼び出しの声待つほかに今の世に待つべきことのなかりけるかな
高杉晋作
 おもしろき事もなき世をおもしろく住みなすものは心なりけり
西郷千重子
 なよ竹の風にまかする身ながらもたわまぬ節もありとこそ聞け
新門辰五郎
 思ひおく鮪(まぐろ)の刺身鰒(ふぐ)汁(とじる)ふっくらぼぼにどぶろくの味
仮名垣魯文
 快く寝たらそのまま置炬燵いけし炭団の灰となるまで
山川登美子
 をみなにてまたも来む世ぞ生まれまし花もなつかし月もなつかし
幸徳秋水
 爆弾の飛ぶよと見てし初夢は千代田の松の雪折れの音
乃木希典
 現し世を神さりましし大君のみ跡したひて我はゆくなり
乃木静子
 出でまして帰ります日のなしと聞く今日の御幸にあふぞ悲しき
黒岩涙香
 磯の鮑に望みを問へばわたしゃ真珠を孕みたい
有島武朗
 世の常のわが恋ならばかくばかりおぞましき火に身を焼くべき
島木赤彦
 我が家の犬はいづこにゆきぬらむ今宵も思ひ出でて眠れる
栗原安秀
 冴え渡るあの月のごと心をば清く守りて進みゆかなん
 古くより伝へ来たりし国体を護らんものと若き武夫
 刀折れ矢種も尽きぬ今はただ名を惜しみてぞ行かまほしけれ
栗林忠道
 国のため重きつとめを果し得で矢弾尽き果て散るぞ悲しき
 仇討で野辺には朽ちじ吾は又七度生まれて矛を執らむぞ
 醜草の島に蔓るその時に皇国の行手一途に思ふ
山下泰文
 待てしばし勲残して逝きし戦友後な慕ひて我も行きなん
東条英機
 たとへ身は千々に裂くとも及ばじな榮えし御代を落とせし罪は
 散る花も落つる木の実も心なき誘ふはただに嵐のみかは
 我行くもまたこの土地にかへり来む国に酬ゆることの足らねば
太宰治
 池水は濁りに濁り藤波の影もうつらず雨ふりしきる
前田夕暮
 雪の上に春の木の花散り匂ふすがしさにあらむわが死顔は
中条ふみ子
 灯を消してしのびやかに隣にくるものを快楽の如くに今は狎らしつ
三島由紀夫
 益荒男がたばさむ太刀の鞘鳴りに幾とせ耐へし今日の初霜

 

合掌  】