涙シリーズD「野口シカの手紙」

「親から子へのメッセージ」から許可を得て引用

 

野口英世の母シカの手紙
野口英世の母シカは学問も無く、字が書けませんでした。しかし、息子に一目会いたさに、囲炉裏の灰に指で字を書く練習をしながら、この手紙が書かれたのだそうです・・。

 

 

<清書>

おまイの。しせ(出世)にわ。みなたまけ(驚ろき)ました。わたくしもよろこんでをりまする。
なかた(中田)のかんのんさまに。さまにねん(毎年)。よこもり(夜篭り)を。いたしました。
べん京なぼでも(勉強いくらしても)。きりかない。
いぼし。ほわ(烏帽子=近所の地名 には)こまりおりますか。
おまいか。きたならば。もしわけ(申し訳)かてきましよ。
はるになるト。みなほかいド(北海道)に。いてしまいます。わたしも。こころぼそくありまする。
ドか(どうか)はやく。きてくだされ。
かねを。もろた。こトたれにこきかせません。それをきかせるトみなのれて(飲まれて)。しまいます。
はやくきてくたされ。はやくきてくたされはやくきてくたされ。はやくきてくたされ。
いしよ(一生)のたのみて。ありまする。
にし(西)さむいてわ。おかみ(拝み)。ひかしさむいてわおかみ。しております。
きた(北)さむいてはおかみおります。みなみ(南)たむいてわおかんておりまする。
ついたち(一日)にわしおたち(塩絶ち)をしております。
ゐ少さま(栄昌様=修験道の僧侶の名前)に。ついたちにわおかんてもろておりまする。
なにおわすれても。これわすれません。
さしん(写真)おみるト。いただいておりまする。はやくきてくたされ。いつくるトおせて(教えて)くたされ。
これのへんちちまちて(返事を待って)をりまする。ねてもねむれません

 

<訳>

お前の出世にはみんな驚きました。私も喜んでおります。
中田の観音様に毎年、夜篭りをいたしました。
勉強をいくらしてもきりがありません。
鳥帽子という村からのお金の催促には困ってしまいます。
お前が戻ってきたら申し訳ができましょう。
春になるとみんな北海道に行ってしまいます。
私も心細くなります。
どうか早く帰ってきて下さい。
お金を送ってもらったことは誰にも聞かせません。
それを聞かせると、みんな呑まれてしまいます。
早く帰って来て下さい。
早く帰って来て下さい。
早く帰って来て下さい。
早く帰って来て下さい。一生の頼みであります。
西に向いては拝み、東に向いては拝んでおります。
北に向いては拝んでおります。
南に向いては拝んでおります。
ついたちには塩断ちをしております。
栄昌様についたちには、拝んでもらってます。
何を忘れてもこれは忘れません。
写真を見ると拝んでいます。
早く帰って来て下さい。
いつ帰れるか教えて下さい。
この返事を待っています。寝ても眠れません。