品確法「20条の7」とは下記の
(七)一年を通じて、ホルムアルデヒドの量を空気1立法メートルにつきおおむね0.1ミリグラム以下に保つことができるものとして、国土交通大臣の認定を受けた居室については、建築材料の使用制限及び換気設備の設置に係わる規定を適用しないこととした。(第二〇条の七関係)
であり、ウッドビルドとしてはこの認定に申請を試みて、3年4か月を要しましたが結果として認定をして頂きました。
【20条の7】
「正しい家づくり虎の巻」より引用
大臣認定までの3年4ヵ月
大臣認定までの3年4ヵ月は法律と行政手続きに翻弄されました。この経緯を理解していただくために、法律等の基本的事項を簡単に説明します。
法律とは・・・議会の議決を経て制定される。衆議院・参議院の議員、両議院の委員長、あるいは内閣が法律案を提出する。
立法権と行政権とが分離された中においては、行政機関が制定できる法規の範囲等 問題になる。
政令とは・・・国会の議決は必要なく、内閣が制定する命令。
省令とは・・・各省の大臣が行政事務について、法律もしくは政令を施行するため発する。特定の法律を施行するのに必要な規定をまとめて制定したものが多く、そのような省令は「〜施行規則」などと命名されることが多い。
行政手続き法上の審査基準・・・申請により求められた許認可等について、その法令の定めに従って判断するための基準。
品確法とは・・・住宅の品質確保の促進等に関する法律。2000年施行。住宅の性能に関する表示基準・評価の制度を設け、住宅の品質確保の促進、住宅購入者等の利益の保護、住宅紛争の迅速・適正な解決を図ることを目的とする法律。従来、民法が定める瑕疵担保責任は1年と短かったが、その期間を10年に延長して義務化した一方で、性能表示制度は任意制度で、供給者や取得者(施主)が希望した場合に限って適用される。
空気環境(省令)特別評価の手順はこうだった。
@ 国交省・基準策定⇒評価 国が認めた財団・民間団体(ハウスメーカー他拠出)
A 指定評価機関⇒指定 財団・民間団体が大臣から認定を受ける
B 評価審査委員⇒審査 指定を受けた団体が任命する学識者
C 認定⇒ 審査を経て大臣が認定
2003年4月22日
ウッドビルド・寺島他7名・・・20条の7の申請窓口はどこか国交省を訪問
国交省建築指導課 「まだ法の整備がなされていません。あくまで換気が基本です。」
《ポイント》換気が基本と言っていた国交省建築指導課の課長補佐がウッドビルドの研究資料を解読し、透湿透過による改善はあり得ることを示唆し、国の評価基準作成に尽力してくれる。
2003年6月
ウッドビルド・・・全国から5万4642名の陳情署名を集め、国交省建築指導課長宛に早期評価を促す。
2003年7月1日 建築基準法で「24時間換気装置の設置義務」が施行された!
2003年8月20日
国交省建築指導課島田課長補佐 (8回訪問)
透湿透過に関する評価基準が島田課補のもとで作成される。基準説明を評価機関「財団法人 日本建築センター」に行う。訪問から特別評価の基準作成に4ヵ月を要する。島田課補は「10月には評価機関が指定され、特別評価の窓口が開く」との見解を語る。
2003年10月23日
島田課補 10回目 「評価機関側がWB工法の理解ができていないでいる」
2003年12月2日
島田課補 11回目 「再三にわたり督促しているが・・・・。評価の主体はあくまで指定機関なので評価機関主導で進めたい。」
《ポイント》4ヵ月で評価基準を策定した国交省に対し、基準を元に評価を行う民間評価機関は4ヵ月たっても業務方法書の作成ができず、さらに数か月かかるという。
ウッドビルド柏野 このままでは引き伸ばされる可能性が大きい
「対応策が必要と考えます。評価機関へ直接説明をしたい」(建築指導課の了解を得る)
2003年12月5日
評価機関
日本建築センター
石原課長他
1回目 「WB工法の資料を専門機関で検討している」
ウッドビルド柏野 見通しの見解を求める
2003年12月11日
日本建築センター
石原課長 「国交省への提出にはあと2か月以上かかります。国交省の指示なのでやらざるを得ない」「正直大変困っている。出来ることなら逃げたい心境。不適切だと裁判沙汰もあり、住宅産業界に混乱をまねく。プレッシャーも大きい。」
2003年12月26日
国交省建築指導課
島田課補 新技術に対する日本建築センターの対応能力不足を指摘(課補が直接打ち合わせる)。
センターから島田課補へ業務方法書(案)が届く
《ポイント》業務方法書とは、換気以外に想定していなかった例外的な新技術(特別評価20条の7)に対し、国交省が策定した基準に沿ってどう評価していくのか民間評価機関(日本建築センター)が提出する方法書。
3004年1月8日
日本建築センター
石原課長 2回目 透湿透過のメカニズムが理解できない。
《ポイント》評価基準を作りセンターを指導している担当者の熱い思いには感謝しつつも、センターから任命された評価機関(御用学者)の先生方は透湿透過による空気環境の改善は考えたこともないようで、傲慢にも「評価に値しない」と門前払いしている。
2004年3月29日
国交省建築指導課
野坂係長 5回目 日本建築センターへ出向き打ち合わせを行う。
「若干手直しがありますが、4月末には正式に業務方法書が提出される見込みになりました。(評価機関の指定は確実と思われます)」
特別評価手順A指定評価機関の認定に11か月を要する。
2004年5月28日
日本建築センター
石原課長 7回目 「業務方法書は提出しました」「認定の可能性が高くなりました」
2004年7月23日
シックハウス対策の新工法(上記A段階)
性能評価方法(指定評価機関)が大臣から認定される
(財)日本建築センターが取得業務を開始
日本建築センターへ訪問 17回目
指定評価機関
日本建築センター 特別評価の窓口が開く
2004年12月27日
ウッドビルド 1年7ヵ月待ちに待った申請書を提出(しかし正式受理は見送られる)
2005年1月7日
評価審査委員 4名 1回目 第一回ヒアリング開始
「我々は5年かけてありとあらゆる角度から検討した結果、換気より他に方法がないという所にたどりついた」
《ポイント》国交省担当官の誠実さによって新技術の道が拓かれたが、特別評価「20条の7」に対して民間評価機関(センター)から任命された審査委員は透湿透過の審議をすることなく、自分たち「民間評価機関の認定ではどうか」と言い、自分たちが作った換気義務化の正当性を主張している。
2005年2月28日
ウッドビルド・寺島・・・5万4000余の署名を持って大臣はの陳情と行政訴訟の決意を固め、評価機関へ伝える。
2005年3月3日
ウッドビルド 国交省大臣官房審議官(住宅局担当)和泉氏を訪ね現状説明をする。
2005年3月14日
日本建築センター
羽生専務理事
塚田評定部長 ウッドビルドへ来社
1ヵ月以内の評価を約束する。
2005年4月14日
評価審査委員、坂本委員長、小峰主任、赤林委員、大場委員、倉渕委員、関根委員 1回目
評価委員と本格的技術審査に入り、委員による冒頭の説明があり、換気義務化の基本的考え方の定義が語られる。
@ 石膏ボードはホルムアルデヒドの遮断材である。
A 化学物質はホルムアルデヒドだけではない。
B よって室内空気の改善には換気は万能である。
ウッドビルド 柏野
透湿透過高気密構造による化学物質自然低減の説明
@ 完成した住宅200棟を四季にわたり実測した資料を提出し、低濃度の実態を説明する。(信州大学)
A ホルムアルデヒド透湿透過による濃度低減のメカニズム実験を説明する(九州大学)
評価審査委員
「完成住宅を何百棟実測しても参考にはなりますが、評価に値しません。なぜなら実測は出口評価で今回の法律は入口評価だからです」
 「”透湿透過”、”水蒸気分圧”といっても当方に知見がないので評価できません」
「自然界において室内空気環境の改善はあり得ないのです。なぜなら物が動くには駆動力が必要です。ということは今回の法律は動力なしではだめだということです。」
《ポイント》「出口評価」とは完成住宅の測定評価で、「入口評価」とは設計段階の予測評価の意味。自分たちが推奨してきた窒息住宅から起こった問題の解決策として、5年をかけて作り上げた換気義務化(入口評価の法律)ではなく、壁の呼吸(透湿透過)によって解決されることは、自分たちの面子以上の大きな問題(訴訟)に発展する恐れがあると予測した言動とも言える。
ウッドビルド 柏野 「20条の7の規定のどこに書いてあるのか!」
評価審査委員 「我々が法律です・・・・」
ウッドビルド すでに2年半が経過、中小企業の経済的限界と判断。激論の末、妥協点を探る
評価審査委員
小峰主任 透過の濃度勾配だけではどうか!水蒸気がからむと複雑な家の実証がむずかしい
《ポイント》完成住宅200棟を測定して化学物質がないと主張しても測定を真っ向から否定していることは、湿気と化学物質の「集合体の分子」が壁を透過している詳細を複雑な住宅構造の中では実証できないことを彼らは知っていたとも言える。
ウッドビルド 柏野 評価審査委員から要請があり、絶対乾燥(湿度ゼロの状態)による実証実験を行い透過を確認する。
技術の妥協
◆評価側
・「化学物質の壁透過は考えてもみなかった、盲点だった・・」と漏らす
・石膏ボードのホルムアルデヒド透過を認める
◇申請側
構造体(室内ではなく通気層)への動力使用を承認する
評価機関
評価委員
ウッドビルド 設計ルール作成に専念
急速に評価が進み大詰めを迎える
2006年5月26日
指定評価機関
日本建築センター
立石理事長
性能評価書(上記Bの段階)
20条の7 通気断熱WB工法
BCJ基準−AV0001−01
室内換気を具備せず機械換気の0.5回/時以上に相当する透過を備えている構造方法と評価する
特別評価手順Bの審査に22か月を要する。
2006年8月11日
国交省建築指導課
2週間ぐらいと言っていた大臣認定が1ヵ月、2か月過ぎても届かないため、性能評価書の行方を追ったところ、何の権限もない他の研究機関へ送られ再評価されようとしていた
《ポイント》今だかって一度も認定したことがない特別評価なので、最後の最後まで学者と法律の面子を守ろうとしていたのでしょうか。(上記C段階)
ウッドビルド 大臣認定 2006年8月11日 認定番号 RLFC−0001(第一号の認定となる)
特別評価手順Cの大臣認定交付に2か月半を要する。
ウッドビルド 国交省で認定書を受け取った後、礼を言うために評価機関を訪問する
日本建築センター
羽生専務理事
他3名
「今はいろいろ申請されているが窓口でほとんど却下されている!」
「それにしてもよく認定になりましたね。規格住宅でも難しいのに・・!」
「自由設計では空気環境の保証は出来ないのが学会の見解なんです!」
「あきらめないで根気よく追求しましたねえ〜!」
「こんな難しい物件が多いと、センターはつぶれてしまいます。あはは・・」
ウッドビルド 謝意
特別評価20条の7の認定経過を記録の中から抜粋し、記載しました。国交省はじめ評価機関、評価委員、専門技術に携わる方々の熱意なくして認定はなかったものと深く感謝申し上げます。また「考えてもみなかった、盲点だった」という本音には勇気づけられました。
《ポイント》国交省の課長補佐は実直で責任感の強い方でした。評価機関も比較的真面目に対応してくれました。関係者の中には悪い人はいないのですが、ガチガチに融通の効かない仕組みが出来上がっています。これは「国(官僚)−第三者機関(学識者)−大手ハウスメーカー」というトライアングルの構造にこそ問題があると思えてなりません。